二十歳の頃、ふと目にした田舎の冬の情景を描いた一枚の絵に「懐かしさと温もり」を感じたのです。
豪雪降り積もる民家の中にある囲炉裏の火の暖かさや人の温もりさえも伝わってくるような不思議な感覚でした。
この時から私の中の何かが動き出し、自分も何かを表現したいと思いカメラを手に取ったのです。
志した写真という一筋の道も荊が敷き詰められ、年月が流れるにつれ勾配は増すばかり、そんな中で己の心に画聖長谷川等伯作(安土桃山時代~江戸時代前期)国宝「松林図屏風」が宿っていることに気付かされたのです。
松林を包み込む靄それ自体を描くことなく、手前に描いた松を濃墨で荒々しく、背後の松を薄墨で柔らかく表すことにより、あたかも靄が実在しているかのような、まして湿気を帯びた大気までも観る者に錯覚を抱かせてしまう松林図屏風は、『描かずに表す』技法を駆使した我が国の水墨画の最高峰とまで評されています。
はたして私は、カメラという媒体を通して『描かず(描写)せずして表す』ことが出来るのであろうか。しかしいつの日にか、靄が創り出す幽玄美と空白美により形成された松林図屏風や枯山水の世界観に一歩でも近づけるよう精進して参りたいと思います。拙い作品ではございますが御高覧頂ければ幸いに存じます。
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